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【感想】「駒田蒸留所へようこそ」、KOMAという家族の絆。

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駒田蒸留所へようこそ
(c)2023 KOMA復活を願う会/DMM.com

映画『駒田蒸留所へようこそ』公式サイト

STORY

先代である父亡きあと、実家の「駒田蒸留所」を継いだ若き女性社長・駒田琉生(こまだ るい)が、経営難の蒸留所の立て直しとともに、バラバラになった家族と、災害の影響で製造できなくなった「家族の絆」とも呼べる幻のウイスキーの復活を目指す―。

P.A. WORKS公式サイトより

P.A.WORKSのお仕事シリーズに初めて触れたのは「SHIROBAKO」だった。知人に薦められて見たのだが、アニメ業界に深く触れたこの作品に感動したのをよく覚えている。それから「花咲くいろは」、「サクラクエスト」、「白い砂のアクアトープ」と続けて見た。老舗旅館、町おこし、水族館、どの作品もすごく魅力的で、僕はそれからP.A.WORKSという会社のファンになった。

自分のやりたいこと

主人公の琉生と何となく蒸留所を取材することになった光太郎を軸にして物語は進んでいく。

光太郎は自分のやりたいことがわからず、仕事を転々として、今はニュースサイトの記者をしている。それゆえ仕事に身が入らず辞めることを考えたりもしている。

僕自身も今でこそ自分の仕事に納得して日々を過ごしているが、誰もが自分の仕事に疑問を持ったことがあるのではないだろうか。僕がしたかった、私がしたかった仕事はこんなことではない、他にもっと自分に合った仕事があるのでは? みたいな考えだ。

周りがキラキラしているように見える。
光太郎にとってはそれが琉生だった。若くして蒸留所の女社長、通っていた美大を辞めてまで継いだ家業の仕事、やりたいことに打ち込んでいるその姿が眩しく、羨ましく思える。

仕事はやっていくうちに面白くなっていく

お仕事シリーズ全てが結局はこの結論に辿り着くのだが、仕事は本気になってから初めて面白くなっていくものだ。

物語中盤で語られているが、琉生も蒸留所を継ぎたいと最初から思っていたわけではなかった。ここを家族の大切な場所として守りたい、その一心からである。最初はよく泣いていたらしく、慣れないことに悪戦苦闘していたことは想像に難くない。

光太郎はそんな彼女の一面を知り、協力したいと思い変わっていくのだ。

自分の本当にやりたいことをやっている人も中にはいるだろう。パッと思いつくのはスポーツ選手、プロ野球選手なんて良い例だろうか。だが、入団して活躍できるとなるとほんの一握りで、大多数は夢破れて違う仕事に就いている現状がある。そこから長い人生の中で、新たにやりたいことを見つけて前に進んでいくのだ。

仕事は無数にあって、合わないから辞めたい、もっと良い仕事があるはずだと人は考えがちだが、一度本気になってみてからでも遅くないとは個人的に思う。

光太郎のように仕事が楽しくなるかもしれないのだから。

正確な情報を発信するということ

少し話が脱線するが、物語中、光太郎のアップした原稿によって、とある蒸留所がバッシングを受ける場面がある。新聞やニュース記事などの正確性というのは本当に大事で、それに読者が踊らされてしまう危うさも同時に感じさせられた。「推しの子」という作品でもあったが、見せ方によって、意図しないところへ向かい炎上してしまうネット社会ならでのは怖さというものだろうか。

情報を取捨選択できる力が個人に求められる時代にもなっていると思った。

「KOMA」と家族の絆

琉生には圭という兄がいる。彼もまた駒田蒸留所のことを愛していた。父といい、この兄といい、不器用であるけれど家族の絆を一番大切にしていたのは心に染みた。

駒を回すには糸がいる

本作品で一番の名セリフである。家族の絆というものを深く感じさせられ、最後に微笑んだ母親の顔に涙をした人も多いだろう。

余談だが光太郎が兄のことを別れた彼氏かと思ったと言っていたが、僕自身もそう思っていたので笑ってしまった。

まとめ

終わってみれば大変にすっきりとした後味の良い映画であった。誰もが鑑賞後に今までよりも少しだけウイスキーに興味を持ち、飲みたいなと思ったに違いない。

ここでは触れないが琉生のちょっとした人には言いづらい趣向も良い味を出していたと思う。それはぜひ劇場で確かめて欲しい次第だ。

  • この記事を書いた人

ささのは

風景やポートレートを撮っています。
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