お父さんにこそ観て欲しい。「バケモノの子」は父性の物語。
細田守監督の最新作『バケモノの子』が絶賛公開中ということで、休日を利用して鑑賞してきました。
『時をかける少女』で監督を知ってから、もう9年。気づいたら、ポスト宮崎なんて呼ばれて、凄く人気が出てきましたね。一ファンとしては嬉しいやら複雑やら。
ストーリー
人間界「渋谷」とバケモノ界「渋天街」は、交わることのない二つの世界。ある日、渋谷にいた少年が渋天街のバケモノ・熊徹に出会う。少年は強くなるために渋天街で熊徹の弟子となり、熊徹は少年を九太と命名。ある日、成長して渋谷へ戻った九太は、高校生の楓から新しい世界や価値観を吸収し、生きるべき世界を模索するように。そんな中、両世界を巻き込む事件が起こり……。
シネマトゥディより
物語は『父親と息子』をテーマにした王道も王道もの。前作『おおかみこどもの雨と雪』では『母親と子ども』をテーマにしていましたから、順当といえば順当ですね。
パンフレットによると、ちょうど前作が完成した頃に細田監督にお子さんが生まれたということで、今回の映画は監督の我が子への思いが強く反映されているようです。
感想
『父と息子』ってこうありたいなっていうシーンが序盤からたくさん詰め込まれています。熊徹と九太の絡みは観ていて終始ニヤニヤしっぱなしでした。
昔ならそんなに共感することもなかったかもしれませんが、もう30代半ば、僕も歳をとりましたからね。子どもが絡むお話には本当に涙腺が弱くなりました。
現代社会の中で、父と息子の関係って少しずつ希薄になっていますよね。でも、本当はお父さんはこの映画のように息子と接したいと思っている。そんな細田監督の思いがしっかり伝わってきました。
で、それに一役買っているのが熊徹役の役所広司さんの演技です。役所さんの演技は本当に最高で、ストーリーはよく考えると多少強引な部分も多いんですが、その演技力で物語にぐいぐい引き込んでくれます。
余計なことを考えているのが馬鹿らしくなるほどの演技。
不器用なんだけど、不器用なりに九太のお父さんのつもりで最後まで頑張っていた熊徹。
壮大なネタバレになるので、詳細は伏せますが、彼の最後の思いと行動は、世の息子を持つお父さんだったら、みんなわかったんじゃないかなぁ。観に行ったお父さんたち、どうでした?
あと、百秋坊役のリリー・フランキーさんと、多々良役の大泉洋さんも良い味出してましたね。彼ら二人がいてくれたおかげで、物語により深みが出ていました。
個人的に不満なのは、青春ストーリーである以上、ヒロイン役が必須というのは承知なのですが、それでも楓はもう少し控えめなポジションでもよかったかなっていうところ。
彼女が後半は前面に強く出てくるので、熊徹と九太の絡みが後半はあまり出てこないんですよね。
まぁ、思春期の男の子なんで、父親よりも女の子の方に行っちゃうのはリアルっちゃリアルなんですけど。特に楓は凄く可愛いので(笑)。
総じて機をてらった演出もなく、最後まで王道。そして満足感。『時かけ』のような目新しさはないかもしれませんが、この夏、安心して家族で、友達で、恋人で観られる映画だと思いました。
でも、個人的には、やっぱりお父さんと息子さんで観に行って欲しいかな。
この映画、1回だけじゃもったいないので、僕は最低あと1回は観に行こうかと思います。きっとまた違った面も見えてきますからね。
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