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【感想】「リズと青い鳥」。それでも、二人はいつまでも親友だから

2018年4月23日

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(c)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

『リズと青い鳥』公式サイト

公開前からずーっと気になっていた映画、「リズと青い鳥」。公開初日に早速観てきたので、簡単に感想などを。

【感想】「リズと青い鳥」

あらすじ

ーひとりぼっちだった少女のもとに、青い鳥がやってくるー

鎧塚みぞれ 高校3年生 オーボエ担当。
笠木希美 高校3年生 フルート担当。

希美と過ごす毎日が幸せなみぞれと、一度退部をしたが再び戻ってきた希美。
中学時代、ひとりぼっちだったみぞれに希美が声を掛けたときから、
みぞれにとって希美は世界そのものだった。
みぞれは、いつかまた希美が自分の前から消えてしまうのではないか、という不安を拭えずにいた。

そして、二人で出る最後のコンクール。
自由曲は「リズと青い鳥」。
童話をもとに作られたこの曲には、オーボエとフルートが掛け合うソロがあった。

「物語はハッピーエンドがいいよ」
屈託なくそう話す希美と、いつか別れがくることを恐れ続けるみぞれ。

ーずっとずっと、そばにいてー

童話の物語に自分たちを重ねながら、日々を過ごしていく二人。
みぞれがリズで、のぞみが青い鳥。
でも……。
どこか噛み合わない歯車は、噛み合う一瞬を求め、まわり続ける。

説明するまでもない、この作品はTVアニメ化もされた「響け!ユーフォニアム」からの派生な訳ですが、本編が動の作品とするなら、この作品は静の作品だというのが最初の印象でした。

主人公はアニメ2期で一波乱あった、みぞれと希美。あの時点で問題は解決したんだと思っていましたが、そこは青春の1ページ、そんなに簡単ではありませんでした。

描かれる二人の対比とみぞれの成長

いつも誰かに囲まれていて、中心的な存在の希美。一方、希美が一番で、あえて人との接点をあまり持とうとしないみぞれ。

みぞれの世界の全ては希美。オーボエを吹いたきっかけも希美が誘ってくれたから。

みぞれは、テーマ曲の元になった動揺「リズと青い鳥」のリズに自分を、希美に青い鳥を重ねます。

一度自分の目の前からいなくなってしまった希美を自分の手で手放すなんてとんでもない。ずっと檻に閉じ込めておきたい。

この辺に少しヤンデレ感が出ていましたが、それだけ希美のことが好きなんだと考えれば、逆に切なく感じました。

そんなみぞれの変化を促したのは、新1年生で同じくオーボエ担当の剣崎梨々花。初登場シーンからノンビリとした雰囲気のある子だと思っていましたが、物語を通して、この娘が重要なキャラクター。あまり他人と関わらないみぞれに対して、積極的にコミュケーションをとろうと、なんどもめげずチャレンジする姿は、どこか人懐っこくて大変可愛い。

結局、何度チャレンジしてもうまくいかずだったのですが、梨々花にあったすごくショックな出来事をきっかけに二人の中は急速に縮まっていきます。

当たり前だと思っていたことが、当たり前でなくなっていく

きっかけは二つの大きなこと。

その一つは、みぞれだけが音大に誘われたこと。昔からみぞれのオーボエが好きだった希美。それでも、自分のフルートはみぞれと対等だと思っていたし、自信もあった。だからこそ、みぞれだけが音大に誘われたことに嫉妬して、自分も意地を張った。私も進路調査白紙だったのにな。

二つ目は梨々花の存在。今までみぞれが何かを自発的に行動することなんてなかった。そんなみぞれが初めて自分以外の人間と交友を持った。物語中、プールにみんなで遊びに行く描写があるのですが、梨々花を誘いたいという発言に対して、希美の驚いた表情は忘れられません。

青い鳥は空に飛び立とうとしている

今までずっと自分をリズに重ねていたみぞれ。でも、考え方を変えて、自分を青い鳥の立場に重ねてみたら? 希美が私のことを考えてくれて出してくれた結論だとしたら?

その瞬間、みぞれの世界は広がった。

このあとにみぞれが率先して、希美と再び掛け合いのソロパートをやるのですが、この時のみぞれの演奏が圧巻でした。それを表現するための映像描写も残酷で、圧巻の演奏をするみぞれの傍で、自分との実力差に気づき、泣き出してしまう希美。合わせるだけで精一杯。

みぞれへの嫉妬と自分の不甲斐なさで顔が歪んでいくシーンは、僕も泣いてしまっていました。

好きということ

このあと、生物室で二人でぶつかり合うシーンが物語のクライマックスでした。

吹部に誘ってくれた、明るいところが、声が、仕草が、足音が、希美のことがみんな大好きで一番。

希美が私の全部なの。

希美の表情は、そんなみぞれの想いを全てわかっているようでした。いや、実際わかっていたんでしょうね。だから、もうやめて欲しかった。

それでもまくし立てるみぞれに、希美の答えは
みぞれのオーボエが好き」でした。

不甲斐なくて、辛くて、でも、みぞれのことが大好きで、きっと頭の中はグチャグチャだったんだろうと思います。好きというベクトルの違いはこんなに悲しいものなのか。

「オーボエが好き」には自分のフルートへの才能の絶望はもちろんでしょうが、この時に自分のことをリズに重ねて見ていたであろう一面から考えれば、才能を持ったみぞれを自分の元から飛び立たせてあげようという思いもあったのかもしれません。

まとめ それでも、二人はいつまでも親友だから

これから先、二人の歩いて行く道は別々になるでしょう。希美は一般大学に進学し、みぞれは音大に進むことになる。それでも、二人はいつまでも特別な関係でいると僕は思うんです。

高校生活の1ページはかけがえのないもので、いつまでも宝物。願わくば、この後の久美子たちが主役の新作映画で、大会での二人の演奏を少しでも見ることができたら、僕は幸せです。

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ささのは

風景やポートレートを撮っています。
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